2012年1月29日日曜日

金閣寺派?龍安寺派?


海外の人に京都の庭を案内していると、その国の人の「好み」の庭がなんとなくわかってくる。
案内するときは必ず様式も時代も違う、様々な庭を3つ以上紹介するようにしているのだが、国によって「ウケル庭」が少しずつ違ったりする。
なのでそれを考慮の上、庭をチョイスしてあげるようにしている。


例えばアメリカ人。
彼らを案内して必ず喜ばれる場所は、ズバリ「金閣寺」。
金色に燦々と輝くゴールドの建物、そしてその姿を凛々しく映しだす池。
アメリカ人のテンションは金閣を見た瞬間マックスになり、「オー!シャイニーテンプル!ビューリホー!」と絶賛する。
アメリカ人がなぜ金閣寺が好きか?理由は「わかりやすく、派手」だからだ。
金閣を見るのに小難しい解説はいらない。
「600年位昔、中国との貿易でボロ儲けしたショーグンが豪華な別荘と庭を造って、ここを極楽浄土(英語ではヘブンと言っておく)にしようとしたんだよ。」と教えてあげると、ますます「ワオ!」と歓喜の声。
それはまさしく彼らが誇る文化、「アメリカンドリーム」なのだ。
こんな豪華な別荘を建てられるパワフルな権力者のイメージが大好きなのだ。
ピカピカに輝く建物はカトリックの教会にも通じるものがある。
西部開拓時代のゴールドラッシュのDNAが、今も彼らに脈々と流れているのかもしれない。


それとは全く対照的なのがフランス人。
フランス人は金閣を見てもあまり興味を示さない。
キンキラの建物を見ても「フーン」という感じ。理由を聞くと、答えは「Too much!(やりすぎ!)」
フランス人にはゴッテゴテな見た目がイヤラシイらしい。
ショーグンの話も「あ~金持ちがやっちゃったね~」みたいな反応。
しかしそんな彼らが大好きな庭がある。それは「龍安寺」。
白石が敷かれた庭に、3、5、7、合計15個の景石が並ぶ、枯山水の庭。
フランス人は龍安寺の石庭を見たとたん急に静かになり、小声で「トレビアン・・・」と感嘆する。
なぜフランス人は龍安寺が好きか?それは「わかりにくく、地味」だからだ。
龍安寺の石庭を見るには色々解説がいる。
「3、5、7」という縁起のよい数字で構成されている事や、一説では「虎の子渡し」という中国の故事を表現した庭という話、15個あるのに何度数えても14個しか数えられず、ある場所に立つと数えられる・・・などパッと庭を見ただけはわからない話が多い。
そうすると彼らは「庭にそれほどの意味があるとは・・・」と感心する。
龍安寺の石庭は、彼らの大好きな「難解で哲学的な美」に通じるのだ。
フランス人は精神性や哲学的なバックグラウンドがあることで「美」をより尊いものとして捉えるようだ。
わかりやすいのではあかんのである。その美を理解しようとして考える過程に、一番「興奮」するのだ。
「日本のZen Garden (枯山水のこと) には’フィロソフィー(哲学)’があるから美しい!」と生き生きと語る彼らから、繊細な美を愛するフランス人の誇りを感じる。


もちろん例外もあるが、庭を通して北米とヨーロッパの歴史や文化、価値観の違いが垣間見れて興味深い。

さてあなたはどっち派?

1 件のコメント:

  1. どっち派、と言われると難しいですが、私は龍安寺派かな〜

    大学に通うため京都に来て3年ですが、この街には何処にある建物にも、それが建てられたおもしろい理由があって、それを片っ端から知ろうとすると疲れちゃう。龍安寺チックな構造物って京都には多い気がするんです。そんな時にふと金閣寺のようなただ目立つ建物を見ると感動しちゃうんですよね。南禅寺の山門とか東福寺の庭とか。由来を知ればそれは面白いのでしょうが、まずは視覚で掴む、ってのも大事な気がします。

    龍安寺の庭も、それ単体で好きですよ。バックグラウンドを知らなくても十二分に綺麗だと感じます。

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